相続対策(生前贈与)~うまくいったはずなのに…~

事例(1) 備えあっても憂いあり

憂い

最近よく見聞きする「相続税増税時代」。長年のサラリーマン生活を終え、それなりの退職金を手にしたWさんもこのキーワードが気になる一人でした。

書籍やインターネットの情報を調べ、自宅・預貯金等を試算したところ、どうやら相続税が発生しそうです。これは対策が必要だなと考えていたところ、サラリーマン時代の同僚から「自分の墓は相続財産にはならない」との話を聞き、早速、都心に数百万するお墓を購入しました。

この購入資金分がマイナスとなり、このままいけば基礎控除額を若干下回りそうです。しかし、実際の節税効果は数十万です。

節税効果と購入金額のバランスに気付いたWさん。相続対策が失敗して散財したことは墓場まで持って行って隠したいと思いました。

事例(2) タワーマンション都市伝説

タワーマンション

資産家のKさんは保険の外交員から聞いた節税方法に興味を持ち、実行しました。

その節税方法はタワーマンション節税といわれるもので、マンションの高層階の売値と固定資産評価額のギャップを利用した節税方法でした。例えば、現金で5,000万円所有するより、5,000万円のマンション高層階を購入して所有する方が、相続財産評価が下がるというものです。

Kさんはこれで安心と思ったのか、購入して数ヶ月でお亡くなりになりました。

相続人はKさんから言われた通りマンションを売却・現金化しました。そして、マンションの評価を用いて相続税申告を行い、節税対策はうまくいったかのように思われました。

しかし半年後、税務署より相続税申告の加算修正を求める通知が届き、相続人と税務署で争いになりました。終いには裁判にまでなりましたが、結局素直に払っておけば良かったと後悔するような追徴課税を受けてしましました。

事例(3) 現金ならば見つかるまい

現金

Sさんは相続対策を兼ねて妻名義で投資信託を行い、それなりの資産を形成していました。わざわざ現金で引き出してから証券会社の口座に入金していたので、税務署には分からないだろうと、Sさんから妻への贈与税の申告はしていません。

Sさんが亡くなった後、妻は上記の財産は除いて相続税の申告を行いました。

後日、税務調査が入りました。妻名義の証券会社口座があり、それはSさんの相続財産に該当すると言われました。妻は夫から生活費として渡された一部を原資としたもので、初めから自分の口座であると主張しましたが、実質的にSさんのものであったとみなされて追徴課税されてしまいました。

合理的な相続対策

「相続対策」といっても千差万別、情報が氾濫していて中には怪しいものも多くあります。

そもそも、個々の事情を加味して対策を練るべきなのは分かっているのですが、テレビや雑誌で「確実に節税できる」などと聞くと、どうしても興味がわいてきますよね。

恐らく、地道にいくのが王道です。そこで、多くの方が実践している合理的な対策をご紹介します。

1. 年間110万円の非課税贈与

家とお金

1年間(毎年1月1日~12月31日)で贈与しても税金がかからない金額が110万円です。

これは1対1の基準なので、AさんがB・C・Dに各110万円ずつ非課税贈与できるということです。これを毎年コツコツ積み重ねると、それなりの額になってきます。

これは現金に限りません。不動産の持分(110万円相当)を移転するケースもよく目にします。

各年独立した贈与とみなしてもらうために、贈与契約書をきちんと残し、何年かに1回は大目に贈与してわざと贈与税の申告をしておくなどの手間が必要になるようです。

2. おしどり夫婦の特典(2,110万円の非課税贈与)

夫婦

20年以上の夫婦間でマイホーム自体もしくはマイホーム購入のための資金として2,000万円まで贈与税がかからないという特例があります。さらに上記1の年間110万円の非課税贈与分を合わせれば実質2,110万円までとなります。

自宅の土地建物の評価が2,000万円以上である時は、2,000万円相当の持分を移転することもできます。

生前に奥様(もしくはご主人様)に贈与して将来の相続財産を移しておくことができます。

3. 2,500万円まで贈与税を支払わなくて済む「相続時精算課税」

相続時精算課税

相続時精算課税制度選択届出書を税務署に提出することで、2,500万円までは贈与税を支払わなくてもよい扱いとなります。贈与税の支払いを将来相続がおきた時に先延ばしにする制度です。

特徴は以下のとおりです。

メリット
  • 2,500万円までが非課税で、それを超える額の贈与は一律20%となる
    (通常の贈与税は最高で55%の税率)
  • 60才以上の両親もしくは祖父母から20才以上の子供もしくは孫への贈与に適用できる
  • アパートなどの収益物件を贈与することにより、家賃収入の先を子供に移し、親の資産を増やさないことで相続対策となる
  • 相続財産の評価基準が贈与した時に遡るので、価値が贈与時≦相続時となる財産であれば少なく見てもらえる分節税効果がみこまれます
デメリット
  • 贈与税はかからないが、相続税がかかってしまうことがある
  • 「相続時精算課税」を一度選択するとキャンセルできない
  • 不動産につき50~80%減額評価される「小規模宅地等の特例」が受けられない
  • 不動産贈与の際の登記費用、不動産取得税が相続に比べて多くかかる

以上が相続対策(生前贈与)にまつわるちょっとした「トラブル事例」でした。

相続対策については専門の税理士とチーム制で取り組んでいます。お気軽に相談下さい。
また、親からのお金を借りたことにするといった方法もあるようです。興味ある方はお問い合わせ下さい。

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