相続人調査 ~結局、相続人は誰なの?~

Tさんの場合

数年前にご主人を亡くされたTさんが専門家へ相続手続きの相談に行きました。

Tさんから聞いた話によると、Tさんとご主人Mさんは再婚同士で二人の間に子供はいません。但し、ご主人と前妻との間には子供が2人いると聞いているとのことでした。Tさんはその子供達と面識がないとのことでした。

依頼を受けた専門家は、さっそくTさんのご主人の戸籍を遡って調べることにしました。

その過程で面識のない子供達の所在もはっきりするでしょうと伝えました。

1か月後、Tさんは電話で進捗状況を尋ねました。

Tさん
Tさん
先生、その後主人の子供のことは何かわかりましたか?
専門家
専門家
Tさん、まだ戸籍の集め途中ではっきりと断定はできませんがご主人は2回離婚しているようですね。
Tさん
Tさん
えぇ、そうなんですか!?前の奥さんとの間に子供がいるとは聞いてましたが、さらに前にいるとは聞いていませんでした。
専門家
専門家
現在わかっているのは2回離婚歴があることとどちらにも子供がいたということです。その子供の消息については現在調査中です。

その後も専門家が戸籍収集を重ね、結果として以下のような相続関係図をTさんに提示しました。

亡くなったMさんの相続関係図

相続関係図

Tさん
Tさん
先生、主人の前の奥さんの子供(B,C)が相続人というのは分かるのですが、なぜ前々妻との孫(G,H)だけでなくさらに子供の旦那さん(F)まで相続人になるのでしょうか?
専門家
専門家
まず、前々妻との間に子供(E)がいたことはお分かりいただけたかと思います。この子供(E)が現在生きていれば当然相続人になります。
Tさん
Tさん
分かります。
専門家
専門家
でも、子供(E)が既に亡くなっている場合、さらにその子供、つまり孫(G,H)に相続権が受け継がれます。
Tさん
Tさん
孫(G,H)は何となく分かりますが、その旦那さん(F)にも相続権があるのですか? 完全に他人ですよね。
専門家
専門家
ポイントはその子供(E)がいつ亡くなったかです。もしご主人が亡くなる前に既に子供(E)が亡くなっていた場合は、孫(G,H)のみに相続権が受け継がれます。
Tさん
Tさん
孫(G,H)が子供(E)の代わりに、ということですよね
専門家
専門家
そうです。法律用語で『代襲相続』といいます。それとは別にご主人が亡くなった後に子供(E)が亡くなった場合で今回のケースとなりますが、この場合は子供(E)の相続人すべてが相続権を受け継ぎます。つまり子供の旦那さん(F)も一部受け継ぐことになるのです。
Tさん
Tさん
結局、主人の相続人は何人いるのでしょうか?

Tさんはその後、会ったことも話したこともない相続人に対して手紙を出し、一人一人に事情を説明して遺産を分ける手続きをしようとしましたが、顔も知らない人との話し合いがスムーズに進むわけもなく、結局弁護士さんを立てて家庭裁判所の審判を仰ぐことになってしまいました。(おしまい)

相続人とは

相続人とは

亡くなった方に対して相続人となる人には優先順位があります。

第1順位「配偶者(=結婚相手)と亡くなった方の子供」

なお、子供というのは亡くなった方の血を引くものすべてを指します。親権のあるなしは関係ありません。また血はつながっていなくても養子も子供となります。
法律上の配分は配偶者が1/2、残りの1/2を子供の数で等分となります。

第2順位「亡くなった方の父母や祖父祖母」

独身で亡くなった、もしくは結婚して配偶者はいるが子供がいない場合に父母が相続人となります。(父母が先に亡くなっている場合は祖父祖母)

第3順位「亡くなった方の兄弟姉妹」

父母や祖父祖母も亡くなっている場合は兄弟姉妹が相続人となります。

なお、上記順位は亡くなった方の死亡日現在で考えます。

先程のエピソードにも関係ありますが、死亡日現在に生きている人は当然に相続人となります。では相続人となるべき人が既に亡くなっていた場合はどうなるかというと、相続人となるべき人に子供がいる時にかぎり相続権が引き継がれます。これを「代襲相続」といいます。

では、死亡日現在は生きていたが、その後しばらくしてから相続人(例:E)が亡くなった場合はどうなるでしょうか。
これは相続人となるべき人(例:E)が一度は正当に相続をしていますので、その受け取るべき権利を相続人となるべき人(例:E)の相続人(例:F,G,H)で分配することになります。

再婚歴もなく、妻とその間の子供がいれば単純ですが、少しでも別の事情が加わると一辺に複雑化するのがこの相続人調査の怖いところです。

ここで相続人調査を面倒にする要因をいくつかご紹介いたします。

(1)内縁の妻

法律上は配偶者ではないので、相続権は発生しません。離婚の慰謝料にあたるものは認められますが、相続はそうはいかないようです。

(2)養子縁組

養子かどうかは戸籍に載っているのですが、古い戸籍にしか載っていない場合などもあり気づきにくいこともあります。

(3)相続人になるべき人が死亡している

今回のエピソードのケースにあたりますが、相続権がどんどん分散してしまいます。

(4)前婚の子供がいる、もしくは再婚で連れ子がいる

これは現実的に連絡がとれるかどうかという問題が出てきます。

以上が相続人調査にまつわるちょっとした「トラブル事例」でした。
ちなみに回避策としては遺言書の作成でしょうね。

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