遺言書作成~しっかり遺言書を作っておけば~

事例1 兄弟の不仲

不仲

妻に先立たれた開業医Mが都心の一等地に時価1億円以上の邸宅を残して亡くなりました。

Mには3人息子がいて、そのうちの三男がMと一緒に住み夫婦で面倒をみていました。

遺産の争いは葬儀の前から始まっていました。

  • 「自分が長男だから屋敷は自分が相続するべきだ」
  • 「自分が親父の面倒をみていたのだから自分こそ屋敷をもうら権利がある」
  • 「相続権は全員にあるのだから土地建物を売って、代金を3等分にすべきだ」

などお互いに譲りません。
このいわゆる「争続」は5年経った今も解決に至っていません。

事例2 事業(会社)の後継者

バトン

祖父の代から続いている食品加工会社を経営しているAさん。自社株式を60%保有し、社長の地位にあるが死後は長男よりも実績のある二男に譲りたいと思っていました。

そんな矢先、Aさんは急死。生前より役員などには二男を後継者にと伝えてあったが、他の家族も株式を保有していたため、二男の社長就任に異議を述べ、家族だけでなく従業員を巻き込んだ典型的な後継者争いになってしまいました。

昨今では「お家騒動」で経営が傾く会社のニュースも珍しくありませんよね。

事例3 認められなかったメモ

メモ

Hさんは独り暮らしでした。しかも長い間、心臓の病気を患っていて、現在も入院中です。

唯一の家族である息子も音信不通で行方知らずのHさんでしたが、自分が子供の頃から一緒にいた、妹のような存在のSさんが毎日のようにお見舞いに来てくれていました。

Sさんがお見舞いにきたある日、Hさんに発作が起きました。Hさんは自分の死期を悟ったのか近くにあったメモ用紙に「すべてをSさんに託します H(名前のみ)」とだけ書き、Sさんに手渡した後、手術室へと運ばれていきました。Hさんは帰ってきませんでした。

Hさんの葬儀が終わってまもなく、Sさんのところに行方不明の息子がやってきて、「母親の財産は自分がすべて相続する」と言ってきました。
Hさんが亡くなって日も浅いにも関わらず遺産の事しか話さない息子に苛立ったSさんはHさんのメモを見せ、すべて託されたのは自分だと主張し抵抗しました。

結局Hさんのメモは遺言書としての要件を満たしていないため無効となり、Hさんの最後の遺志は実現されないのでした。

事例4 ペットの世話

ペット

Tさんは独り暮らしでした。子供はなく、夫の残してくれた自宅と蓄えに加え、年金も受給しているので生活してく上で経済的に困ってはいませんでした。

しかも高齢ではありますが、近くに住む姪が顔を出し、身の回りの面倒をみてくれていたので不便はありませんでした。

Tさんは1匹の犬を飼っていて、とてもかわいがっていました。唯一の心配事は自分の死後の飼い犬の世話でした。

よく面倒をみてくれる姪に遺産は譲りたいけど、自分の死後は犬の世話もしてほしいと思っています。

でも、世話をしてもらう代わりに遺産を譲るというのは言い出しにくいなとTさんは考えています。

遺言書の作成

遺言書

法律では、「遺言は法律に定めた方式に従って作成しなければならず、これに違反した場合は無効となる」と厳格な要件を定めています。
つまり、方式に逸れた遺言はどんなに苦労して作ったものでも無駄になってしまうのです。

その遺言書には主なものとして、次の2種類があります。

1.自筆証書遺言

特徴は、誰にでもできる一番簡単な遺言書というところです。

作成のポイント

  • 遺言をする人自身の全文直筆
    体が不自由だからと言って、代筆はダメです。(添え手は一応有効)
    ワープロやパソコン等での印刷もダメです。また、録音・録画等の方法も認められません。
  • 日付、氏名を記入し、印鑑を押す
    いつ、誰が書いたかを特定できるようにしなければなりません。「吉日」とかはダメです。氏名は本人であることが確実とわかるならば通称やペンネーム等でも大丈夫です。印鑑は実印以外も認められています。(有効無効に影響するので実印がおすすめですが)
    事例3のHさんは日付を入れて、判子を押せていればもう少し何とかなったかもしれません。
    とはいえ、発作が起きた時にそこまでできる人はいないでしょう。何事も準備が大事ということですね。

2.公正証書遺言

特徴は、信用力の高い、安全な遺言書というところです。

作成のポイント

  • 公証役場に行く
    遺言の内容をある程度まとめて行く必要があります
  • 証人を2人立てる
    公正証書遺言を作成する際に、証人にも署名をしてもらいます
  • 遺言書の原本は公証役場で保管
    原本と同様の「正本」と、その写しにあたる「謄本」を渡してもらえます。

公証役場を利用することで間違いがなく、紛失改ざんの恐れのない遺言を作っておくことができます。

上記事例以外にも遺言書を残すべき人をいくつかご紹介いたします。

1.子供のいない夫婦

例えばご主人を亡くされた奥様がいたとすると、義理の両親や兄弟を相続人として相談しなければならないので、いろいろと気疲れしてしまうかもしれません。

2.内縁の相手がいる人

何十年一緒に暮らしていても、法律上は配偶者ではないので、相続権は発生しません。住まいなどを追い出されてしまう可能性も出てきます。

3.現在の結婚相手との間以外に子供がいる人

別れた奥さんとの間の子供で何十年も会っていないとしてもその子供には相続権があります。自宅を現在の奥様のみに残すためには遺言書が必要になります。

4.相続人予定の人の中に連絡がつかない人がいる

これは現実的に連絡がとれるかどうかという問題が出てきます。遺言がなく遺産分割を行おうとしても連絡がつかないので協議ができません。協議ができないので遺産整理が一向に進まないというジレンマが発生します。

5.自宅以外に遺産といえるものがない人

不動産は分割が難しい財産です。もし子供達のなかに持分を主張する人がいれば、自宅を売却して代金を分ける場合もあり得ます。そうすると奥様は住むところが亡くなってしまうのです。

以上が遺言書にまつわるちょっとした「トラブル事例」でした。

ちなみに遺言書を作成した人の方が作成していない人よりも長生きされているような気がします。私見ですが。

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